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2010年06月15日

「緑色の坂の道」vol.4852

 
     女すわれる荒莚。
 
 
 
■ ざらりとした日が続いた。
 東京を出たり入ったりして、重い風邪が一度。
 美容院が一度。カメラを落とすのが一度。
 
 
 
■ 下着をつけずしゃがみこんでいる。
 その横を、色の褪せたシャツと縮んで踵のみえるパンツを履いた男が歩いていく。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4853

 
     エルドラド。
 
 
 
■ 小型のPCを一台持って、あるところに篭った。
 ぺたぺたと、スリッパが鳴る。
 これで何度目か。ハワード・ホークス監督の西部劇を眺める。
 
 
 
■ 太ったロバート・ミッチャムが保安官役で、内股のウェインが早撃ちのガンマンである。
 粗筋はどうでもいいのだが、ホークスというのはただの不良である。
 ニコルソンのチャイナタウンで、いい味を出していた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4854

 
     エルドラド 3.
 
 
 
■ 車好きな諸兄ならご存知だろう。
 エルドラドとは、キャデラックの車種である。
 贅沢なクーペで、90年代初めまで生産されていたように記憶している。
 できれば色は薄い方が気分だろう。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4855

 
     余花。
 
 
 
■ 枯れかたの美しさ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4856

 
     六月の雲。
 
 
 
■ 峰にかかる。
 薄く。少し白く。
 
 

2010年06月21日

「緑色の坂の道」vol.4857

 
     男30
     GTアゲイン。
 
 
 
■ というコピーが、70年代半ばにあった。
 確か4ドアセダンにDOHCを積んだもの。その1.6や2リッター版だったと記憶している。
 かつてはダルマセリカやバンナなど、車高を低くして乗っていた彼らがとりあえずネクタイをしめる。堅気になる。
 家族を騙し、時々は狼になる。
 という設定の広告だった。
 
 
 
■ 今思えば、薄く笑ってしまうところもあるのだが、実を言うとこういう世界は私は嫌いじゃない。
 男40、何にのる。
 50、60ドーシタラヨカロ。
 どうでもいいという話もあるのだが、それもひとつのポーズだろうか。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4858

 
     女サンゴー
     愛のマルコー。
 
 
 
■ そういうこと書いているから嫌われるんですよ。
 ん、ともいえるな。
 
 
 
■ とはいうものの、だ。
 コンカツと言っている場合でもなさそうなのだ。
 朝陽のバカ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4859

 
     TOKYO ブルーレイン。
 
 
 
■ 夜半車を出した。
 辰巳から大黒、橋の近くのPAまで、すべからく赤ランプが点滅していて、そういえば週末なのだと気づいた。
 適当に降り、何時の間にか羽田辺りにいる。
 
 
 
■ 向こう側にちらちら光るものがある。
 それは揺れていて、立ち上る炎のようだった。
 地上50か60。製油所が近くにある。
 
 
 
■ 私はと言えば、モノレールの高架下に車を停めた。
 眺めると、ナチ占領時代のパウル・クレーの作品のようである。
 橋げたが連なり、その下に最強伝説黒岩を読んだこともあるだろうガードマンが立っていた。彼は多摩川を眺めている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4860

 
     TOKYO ブルーレイン 2.
 
 
 
■ 夜更けの雨は。
 で、始まるピーナッツの曲は、次第に半ば演歌になっていく。
 最後はリエゾンで恨むのである。
 
 
 
■ 恨まれても仕方ないよな。
 誰にともなく言う。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4861

 
     河童の川流れ。
 
 
 
■ 長野県に伝わるという民話がある。
 早苗の頃、娘をみそめた河童が、その親である庄屋にいう。
 娘を嫁にくれないと、水を田んぼに流してやんない。
 
 
 
■ 末の娘が嫁入り道具にひょうたんを選ぶ。
 それも馬の背いくつもである。
 これを川の底に沈めておくれ。
 
 
 
■ 嫁ごの頼みとあれば、河童はまかせとけの世界である。
 いいところを見せたい。
 ひょうたんは浮き、河童はヒロウコンパイ。
 それを眺める末の娘。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4862

 
     河童の川流れ 2.
 
 
 
■ 花は流れてドコドコいくの。
 
 
 
■ 河童は流れてしまった。
 末の娘はそのあとシアワセに暮らし、時折不憫におもって川に胡瓜を流してやったという。
 ドットハライ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4863

 
     河童の川流れ 3.
 
 
 
■ 柳田さんや折口さん以来の民俗学の見解はさておく。
 これは、身分違いの恋の話である。
 身分という表現は、今のフラットな社会ではタブーのひとつなのだが、立場によって夢のみかたがちがっていることは、ご存知の通り。
 河童あわれかお名残惜しや。
 
 

2010年06月23日

「緑色の坂の道」vol.4864

 
     羽田トンネル。
 
 
 
■ ゆるやかに右に曲がり、それから下っていく。
 そこからは川で、途中に関所でもあるのだろう。
 河川敷には家のない男たちが鮒を釣っている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4865

 
     羽田トンネル 2.
 
 
 
■ ヒビ割れたタイルの数で言えば、霞ヶ関のそれといい勝負である。
 ここをノーヘルのK0やケッチの500が駆け抜けたのは60年代終わりで、KOも500SSもブレーキが信じられない位効かなかった。
 タイヤは表面にシリコンを塗ったかのようで、何時だったか峠で乗せてもらったエランなどと同じである。流れるから速く思える。
 
 
 
■ 脇を、15万は走っているだろうタクシーのハイブリッドが、ゆっくりと尻を滑らせながら抜いていった。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4866

 
     June.
 
 
 
■ 橋の継ぎ目で、2センチ滑る。
 フロントとリア。ほぼ同時にである。
 雨はとっくにあがったのだが、ところどころウェットで、何時だったか単車のフロントがあっという間に流れ、コースのエスケープまで横殴りになったことを思い出す。
 皮のパンツとBELLのジェットには傷がついた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4867

 
     June 2.
 
 
 
■ 六月の花嫁。
 という命題前がある。
 数ヶ月かけエステに通い、眉を抜き、関係ないそのほかも抜き、冷ややかに眺める担当の妙齢の前で見栄を張り。
 でもまあ見栄というのは、あるとき全てだ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4868

 
     紫陽花のひと。
 
 
 
■ 昼間の厄介に煮詰まった。
 余裕がなくなったのである。
 
 
 
■ 古来、これをノーニエと呼ぶが、元を正せば山口瞳さんである。
 机の下にもぐり、頭を抱え、ドウシタラヨカロとぶつぶついう。
 それから机の上を片付けたり、資料を選り分けたり、切り抜いてあるデザインや車やカメラなどの資料を斜めに眺めては捨てていく。
 掃除機の先にナイロンの毛のついたものがあって、すみっこをホジクリ出したりしていた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4869

 
     いろがえ。
 
 
 
■ どうにもだめなので、歩いて坂道を昇り降りする。
 歩いていると汗ばむ。
 下校時間なのだろう、まだ新しいランドセルが背中の倍ほどの大きさがあった。
 その横をベビー・カーのご婦人が先を急ぎ、ふりかえると中に、鼻の長い犬がいる。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4870

 
     バスの速度。
 
 
 
■ 信号をぼんやり待っていると、近くにバスが止まる。
 緑坂の印象からだとメッタにないことなのだが、めんどくさくなって乗ってみる。
 料金の支払い方が分からず、後に続いた私立の制服の女学生に冷たい目で見られる。
 
 
 
■ バスはゆっくりである。
 薄く冷房も効いている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4871

 
     紫陽花のひと 2.
 
 
 
■ 適当なところで降りて近くにあるスーパーによる。
 高くもなく安くもない、ごく普通のそういうところである。
 カレーパンと自販機の半額近い500ミリのボトルを買った。
 飲んでみる。
 
 
 
■ 出口のところに紫陽花の鉢植えがあって、何故かは分からないがこちらを呼ぶのである。
 
 

2010年06月28日

「緑色の坂の道」vol.4873

 
     風について。
 
 
 
■ 壊れかけたソファの上でこれを書いている。
 一杯目を嘗めはじめた。
 風邪が長引いたので、最近シガーはご無沙汰である。
 引き出しにしまってあったそれが、見事に乾いていて、仕方ないなと捨てることにした。
 
 
 
■ 久しぶりに体重計というかなんというかに乗る。
 各種脂肪が減っていて、体年齢というかそうしたものが実際よりもマイナス8程度である。
 風邪ひいていたおかげかな。
 と思い、なんか間違ってるような気もした。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4874

 
     雲について。
 
 
 
■ 六月の雲は、時々はっとするような色とかたちをしている。
 いい歳をして、はっとしているのだから少し困るのだが、忘れていた夏の日のことや、これからくるだろう出会いのことも、そこには含まれている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4875

 
     風について 2.
 
 
 
■ 緑色の坂の道 vol.4872
 に載せている作品は、自分で言うのもなんであるが、好きである。
 場所は何処か。季節は何時か。
 レンズやフィルムはどうで、その時撮影者は尿意を催していたのか。
 どうでもいいことなのだが、ちょっと脇道に逸れた絵柄だと思う。
 下に、不要な線のようなものも入っている。
 
 
 
■ 今であれば、そうしたものは消すのだろう。
 そうはしたくなかったのも、少し予感のようなものがあったからだ。
 
 

2010年06月30日

「緑色の坂の道」vol.4876

 
     風について 3.
 
 
 
■ 代表作というのは3つあればいい。
 という説がある。
 毎年、そうした作品が作れる訳ではないのだと。
 
 
 
■ これはとても含みのある話で、好きな小説家や絵描き、デザイナでも写真家でも。
 彼(もちろん彼女)が世に知られるきっかけとなった一作が必ずある筈である。
 なかどころで一作。その後に一作。
 
 
 
■ 後は何かと言えば、その変奏曲なのだろう。
 それをマンネリと呼ぶのは簡単だが、ひと目みてこれは誰だというスタイルを作るのがどれだけ難しいことか。
 スタイルを保ちつつ、老けていくことがどんな技なのか。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4877

 
     格差わすれて。
 
 
 
■ 踊りあかそう。
 とは、誰も言わない。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4878

 
     スタウト。
 
 
 
■ あるとき別宅にいた。
 かろうじてエアコンはある。
 冷蔵庫には、6つに割れたチーズと、やや薄い黒ビール。
 
 
 
■ 電車の音がする。
 ブレーキをかけているのか、雨上がりの911かAMG4ポットみたいに響いている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4879

 
     スタウト 2.
 
 
 
■ ひっくりかえって文庫を捲っている。
 仕事の資料は別にして、小型車に積んできたのは古本が数冊。
 真空管のマニュアルと「丸」の古いもの。
 それからやや高い歯ブラシと、捨てるべき下着である。

 
 
 
■ キタザワー、おまえ歯ブラシと剃刀はいいもの使った方がいいんじゃねえか。
 と、医者をやっている悪友が言った。
 これ、シリコンか。
 おまえな。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4880

 
     スタウト 3.
 
 
 
■ 20代の終わり頃だったろうか。
 ダッシュに当時出たばかりの15連発のモデルガンを入れていた(ええ、良い子はじぇったいに真似をしないように。時代が違います)。
 15連発というのは、もちろん本物の仕様である。
 30過ぎて、赤いランプの点くそれを付け加え、当時乗っていた車のシートに下にベルクロで留める。
 
 
 
■ 全く意味がないことは知っていた。
 まだ原っぱだった埠頭の辺りにでかけ、それから牛丼を食べて戻った。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4881

 
     スタウト 4.
 
 
 
■ で、そのベレッタだかグロックはどうしたかというと。
 数年して後輩に譲った。
 彼は三鷹に住んでいて、ブツの受け渡しは長い長い、ところどころ錆びた陸橋の上である。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4882

 
     スタウト 5.
 
 
 
■ 彼は一時車から離れていた。
 書体じゃね、所帯を持ち、始めに買ったのがプジョーの短い奴である。
 首都高のC1でくるりと廻り、これからは4駆だと280のスバルに走る。
 オイル減るだろ。
 そうでもないすよ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4883

 
     スタウト 6.
 
 
 
■ そんなことを思い出したのは、虹の橋の上を流れに従って走っていた時である。
 速いセダンがいて、トヨタのEU仕様なのだが、これはプリメーラの初代に少し似た走りをする。
 この辺り、覆面の方々が密やかに法定速度少しで走っているのでうかうかできない。
 
 
 
■ EU仕様は白ナンバーの観光バスを抜き、それから左に入った。
 前には上から下まで英国製のミニがいる。男独り。
 私はそれにつき、湾岸に流れるところでEU仕様の後についた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4884

 
     ブエノスアイレスな夜。
 
 
 
■ 彼は何を知っていたか。
 と言えば、たぶん戦後なのだろうとおもう。