2010年3月 Archive

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     青べか物語。
 
 
 
■ 海ほたるへ抜ける時、繰り返しそれを聴いていた。
 飽きれば、何故かは知らないがジャンゴである。
 文化というのはその外縁から眺めると輪郭がはっきりすると言われるが、そう難しい話ではなくて、日に日に移る樹木の緑にこころせくのである。
 
 
 
■ 私は法定速度で走っていた。
 一時湾岸の走り屋たちが、このトンネルで速度を競ったこともあったが、逃げ場のないここでそうするのは子供じみているなと、ひとのことは言えない私はおもう。
 トンネル天井についた、排ガスを逃がすファンが煩い。

 
     鳥雲に入る。
 
 
 
■ 鬼平犯科帳のエンディングには、ジプシーキングスのやや抑えた曲が組み合わされている。赤や青、彩度の高い絵作りで、江戸の四季と暮らしをコラージュしていた。
 実際は京都の嵯峨野周辺や寺で撮影しているのだが、松竹関係者による、テレビ媒体としては最良の仕事のひとつだと個人的には思っていた。
 俳優や女優さんの背が高いのがたまに疵。
 これは広重の構図だな、とにやりとしてしまうものもいくつかあって、例えばスタッフが桜の枝を抱え、レンズの手前で四苦八苦されていたに違いない。
 そういえば大映の時代劇も、その構図や色彩が端的で綺麗だった。
 あの美意識というのも、映画というメディア・媒体が全盛期だったからなしえたことなのか。
 作家の村松さんが何処かで書かれていたことを思い出す。
 
 
 
■ 私は、壊れたかけたソファの上に横になり、空と桜を眺めていた。
 今日は暖かくなる。
 雲ひとつない淡い水色で、風の芯にまだ冷たさが残る。

 
     花冷え 4.
 
 
 
■ この街で生まれ、この街でちょっと粋がり。
 恋して卒業し、どうしてこんな高いんだというような新生児用のチャイルドシートを買う。
 昭和の昔から、ずっと繰り返されてきたことである。
 真夜中に路肩でライトを消すと、とても春には耐えられない。

 
     花冷え 3.
 
 
 
■ 剃り込みを入れた10代の彼が、すれちがうときに挨拶をする。
 私が一歩横にそれたからだ。
 彼はメーカー製トレーニングウェア姿で、兄貴分とおぼしき背の高い彼とおそろいである。
 背の高い彼には眉毛がない。

 
     花冷え 2.
 
 
 
■ 夜のコンビナートというのは、独特の美しさがある。
 私も昔何度か撮影したが、今車を停め、トランクからハスキーを取り出す元気はなかった。
 花は咲いているというのに外は雨なのだ。
 外気は5度。
 いい気になって羽織ってきた春用のブルゾンではどうにもならない。
 シートにヒーターを入れていた。

 
     花冷え。
 
 
 
■ 雲が流れる。
 ところどころ白いものがあって、それが花だと気づくに時間がかかった。
 私は海岸線を走っている。
 高圧電線の向こうに何本もの煙突と水銀灯のモジュールがある。
 雲よりも一層白い煙が、ほぼ水平に膨らもうとして、外は風が強いのだろう。
 
 
 
■ 確か赤門を出た友人がこの辺りに家を買った。もうすこし内陸部である。
 当時、政治家の秘書になろうか、と言っていた彼である。
 結局本社へは戻らなかったのだろうか。その辺りの事情は知らない。
 
 
 
■ 速いマツダが車間をつめてきて、黄色の信号でタイアを鳴かせた。
 あなたの前の車は、型は古いけれども、ブレーキが利くのです。
 ちょっと離れていましょう。
 あるいはお先へ。

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     贅沢は。
 
 
 
■ 敵だ。
 と、書いたのは「パーマネントはやめませう」の国策である。
 そのポスターに「素」を加え「贅沢は素敵だ」と看過したのは大正生まれの先達であった。
 夢二も安吾も、辿っていけばロクデモナイ人生を送っていたのであって、ルパンの隣には焼鳥屋があった。

 
     ヒルズ。
 
 
 
■ 休日のそこは997とケイマンが7台くらいいる。
 私は1000円のシャープ・ペンシルを買いに来ていたところで、何かいいカード入れはないか迷う。

 
     天一号作戦。
 
 
 
■ 眼化に、ライトアップされた桜の枝が色づいている。
 まだ三部咲きというところだが、この命も短い。
 昭和20年の3月26日というのはいわゆる天一号作戦が発動された日で、4月に入るとこれが菊水作戦に集約されていく。
 どうしてまた花の時期に。
 と思うのは後世からの感慨だが、どちらにしても繰り返し美化しようとする気配が顔を覗かせるのは、どうしたものなのかとおもう。

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