2010年02月01日
「緑色の坂の道」vol.4736
2月の初恋。
■ 低い雲である。
昨日まで暖かかったのに、今日はマフラーをしている。
誰かが手袋を落とした。
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2010年02月01日
2月の初恋。
■ 低い雲である。
昨日まで暖かかったのに、今日はマフラーをしている。
誰かが手袋を落とした。
2010年02月04日
2月はじめの月。
■ 雪が溶けると、雲間に月がある。
夜の浜辺に。
■ 誰もいない。
と歌ったのは美空ひばりさんである。
ふらりと聴くと、ほとんどマリア・カラスの歌声にも似ていた。
または名も知らぬファドの音色である。
東京に雪が降った夜。
■ 私は、壊れかけたソファの上で寝そべりながら資料を読んでいた。
雪は綿布団を壊したように散らばる。
隠してくれればいいのに。
おかっぱの女の子の声がする。



2010年02月05日
冷たい皮の上。
■ 登り坂で、ちょっと深く踏むとESPのランプが点く。
凍っている訳でもない。
タイアを替えてから2年ほどは経ったのか。今年の後半には交換しなければならず、あれこれ物入りな時期である。
オイルにしても、そろそろではあるのだが、冬場は特に純正のものでそう問題はないような感じもしていた。どうせ3000で交換だし、神経を使うのは夏なのだ。
冷たい皮の上で。
■ 首都高速をゆっくりと廻り、なにかを確かめていた。
愚かさや、抑えようとしている気配だと思っている。
夜に笑う男。
■ 薄く笑ったような表情の得意な作家がいた。
若い頃は、さぞかしだったろう、というような風情である。
父や母や、そうしたものとはやく別れる。
追うのである。
思うようにならない馬。
■ 手さぐりで肉のようなものを捜す。
もういいだろうか。
と、思うと月がある。
2010年02月10日
夜の犬。
■ 歯を剥きだした犬がこちらを向いた。
おまえなにやってる。
夜の犬 2.
■ 俺はおまえだ。
犬はいう。
それも見物だが。
夜の犬 3.
■ あの方は写真に著作権などないって言ってたよな。
ある方が言われる。
そう広告の方なの。名刺、忘れてきたんだよ。
■ ここ数年、私は薄く笑うようになっている。
多分その方も辞された後、本を何冊か書かれるのだろう。
夜の犬 4.
■ 犬は餌のあるところにしかいない。
2010年02月13日
弁当を隠して食う。
■ 谷啓さんが、長いことそうだったと青島さんの本で読んだことがある。
こういう感性は私は好きで、なんとなく信用が置ける。
■ 話は変るが、今どこにいるとか、なにしているとかを告白することが流行っているという。自己申告であるから本当かどうか分からない。
それを証明するためにわざわざ画像まで貼り付ける場合もあって、おつかれさまだと言いたい。
ちょっとした店で、ちょっと高めの漬物などを買ったりしても、黙って食べてればいいんじゃないかという気がしている。
いい形だねぇ。
■ という台詞が「駅前旅館」という映画にあった。
形は「なり」と読む。
森重さん、伴淳さん、フランキーさんという男優陣。
着物姿の仇っぽい姐さんがたは扇さんなどである。1956.
原作は獅子文六さん。
■ 舞台は高度成長期直前の上野。
森重さん扮する旅館の番頭は技に生きている男である。話術と流れ。
産まれたのは女中部屋。父親の顔は知らない。
江ノ島の芸者。
■ 森重さん扮する番頭は、かつて江ノ島で半被を着ていた。
旅館にいた芸者と訳ありの仲になる。
耳たぶの形を覚えていると。
彼女はその後出世して長野の紡績工場の社長に身請けされる。
女工の寮長となって、上野の旅館で再開を果たす。
■ と、粗筋を書いても致し方ない。
見物は昭和30年代初めの上野の風情と、姐さん方の粋な着物姿である。
森重さんがしゅしゅっと兵児帯を締めると、女中のひとりが「いい形だねぇ」と口にした。
水晶。
■「駅前旅館」のラスト・シーンは、甲府の閣への畦道である。
「夫婦善哉」でコンビを組んだ扇さんが、森繁さんの後を追いかける。
出来すぎなのだけれども大衆映画としてはそれが正しく、その後本作は駅前シリーズとして半ばご当地映画となっていく。
■ ここで思い出すのは、つげ義春さんの確か「池袋百人会」(うろ覚えなので、そこは流れで)という作品である。
当時の徹底した貧乏と、浮き草のような勧誘員と、前髪を伸ばしたインテリの入り婿に見事に騙されていく半グレ妙齢本格派の姿がユーモアと、適度な色気を保って描かれていた。
つげさんの作品、そのラストは「駅前旅館」を下敷きにしていたのかも知れないと、個人的には思っている。
2010年02月16日
某月某日。
■ 億劫というかなんというか。
いたしかたなく酒を嘗め始めた。
外は寒い。
■「赤とんぼ騒動」という吉行さんの随筆を捲っていると、酒場で柴田錬三朗さんに意見されるところが出てくる。
「飲む打つ買うのどれかをやめろ」
とのご高説に、では打つのを止めましょう、と吉行さんは答える。
吉行さん30代初めの辺りでありましょうか。昭和30年代初頭。
お元気というか、そういう時代だった訳である。
2010年02月17日
なんのせいか。
■ 雑務というか〆切というか。
流儀や神経の遣いかたが通じない世界のようなものがあって、またかとうんざりする。
しかしまあ、世の中そんなものだと言えば言えるので、事務処理なのである。
飲む打つ買う。
■ ええ、なんのことやら分からない方もおられると思うが、そこは流れで。
先日、競艇帰りの男達の列を眺めていた。
なんともいえず、独特である。
漂う、と言っても大袈裟ではない不思議な歩き方と風情である。
賭博師たち。
■ という漫画がバロン吉本さんにあった。
代表作は多分「柔侠伝」シリーズになるのだろうが、そこから少し外れた作品群も捨てがたい。
毛筆で描かれた独特の線は、漫画や劇画というよりも、ほぼ絵師の流れなのだろうなという気がする。
■ 鳥打帽を被ってオートレース場にいく。
例えば上野駅の中には開催日が記された看板があって、そのまま地下に降りると不味くて決して安くはない飯屋が並んでいた。
冬時分、青色の電車を待っていると、大体コンビーフの看板が目に付くのである。
2010年02月25日
賭博師たち 2.
■ ホテルの前にタクシーが並んでいる。
車線を潰してしまうので、坂を昇る時に気をつかう。
昨日遅く、黄色のそれが1台だけだった。
大きくドアを開け、咥えタバコの運転手が降りてくる。
彼はミラーを見ていず、私はその横を離れて通り過ぎた。
賭博師たち 3.
■ なんでしくじったかの風情は分かる。
分かっても仕方ないところもある。
いつもより念入りに歯を磨き、化粧台を拭いて灯りを消そうとする。
車は持ち主に似てくる。
■ というコピーが80年代終わりにあった。
BSの高級ブランドのタイヤの広告で、モデルはショーン・コネリーである。
■ 恐らくは英国の納屋のようなところで、コネリーがダーク・スーツを着て車の屋根を撫でている。車はといえば、それも濃い色のディノだった。
向こう側にはモーガンのフェンダーがあったような気もする。
車は持ち主に似てくる 2.
■ 若造だった私は、そのタイアを買った。
グリップもそこそこ、雨にもやや強く、音も煩くはなかったと記憶している。
ただ減りが結構な按配で、一年も経つとフロントから滑った。
FFのセダンに雨の足立区上空の首都高で、軽く置いていかれたのだ。
車は持ち主に似てくる 3.
■ 車に限らず、それが鞄でもスーツでも。
あるいはそのへんに転がっているPCでも無料ブログやサービスでも。
いずれ使っている男や女そのものに近づいてくるような気がしている。
ナイト・アンド・ディ。
■ トミー・ドーシーの頃のシナトラは甘い。
にやけたイタリア男そのものである。
前髪に白髪が2本あったことを認めた数日後、私はそれを一日かけていた。
そのときにしか出ない声というものもあるのだと思う。
車は持ち主に似てくる 4.
■ ディノというのは、車に詳しい方ならお分かりだろう。
246である。
ほとんどコレクターズ・アイテムなのだが、なんのせいか、近くの駐車場にそれが停まっていて、私はカメラを持たないことを僅かに後悔した。
かといって、撮っている姿はいかにも子供じみてもいるのだが。
色や仕様を記すとあれこれあるのでやめておく。
■ 持ち主は年配の方である。
話したことはないけれども、いい車ですね、と、その燃料ポンプとキャブの音を聞いてみたいと思うのだ。


