2009年10月 Archive
- :緑坂 :saka :写真ポスター : デザイン写真ポスター :エッセイ :コラム :コピー :Photo Design Poster.by kitazawa | 北澤事務所
シングルモルトの夜だから 5.
■ 夢のように時は過ぎる。
シェイカーを振って貰うまでもなく、2杯でその店を出た。
2杯目は MACALLAN の緑である。
思うことは色々あるが、独身親元ガンダム世代が主体になればそれでいいじゃないか、という気分も残る。こちらは余所者であった。
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シングルモルトの夜だから 4.
■ カウンターの中には、赤ではなく黒いチョッキを着た30代のバーテンダーがいた。
壁一面の酒の瓶はそのままである。
しばらくして尋ねると、1-2年ほど前に親父さんが亡くなり、後を息子さんが継いだのだと識れた。優しそうな、けれども表情の読めない横顔である。
■ 先客がひとりいて、背広姿の40がらみの男性である。
鞄やネクタイの趣味から、土地の公務員かそれに準ずる仕事をしているのだろうと思われた。
壁に貼られたシングルモルトの産地の地図を指さしながら、ここはあれで、と店主の後継者と夢中になって話している。
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シングルモルトの夜だから 3.
■ 始めから殻が剥かれたピスタチオというのがもしあったら、蟹風味のかまぼこを詰まんでいるようなものかも知れない。
壁に並んだ膨大な数のボトルは、午後2時に店に入ってから全て空拭きされている。
上のものはどうするんです。
と尋ねると、脚立は怖いよねと親父さんは言っていた。
■ 今年の始めだったろうか、所用でその街を訪ねた。
接待というかなんというかが終わった後、一人で路地の辺りを歩く。
確かこのへんだが、と見知った看板の中に入ると、代が変わっている。
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シングルモルトの夜だから 2.
■ ある中堅都市に、赤いチョッキを着たバーテンダーが経営するバーがあった。
何度か、その街に住む友人の案内で通ったことがある。
親父さんはいわゆる鳥巣バーの頃からの生え抜きで、その都市の花街界隈の話はほとんど網羅していたが、それを口にすることはなかった。
いつだったか、マンハッタンを頼んだ。
ベース、何がお好みですか、と尋ねられたが、おまかせしますと下駄を預けた。
■ 出てきたものは、ヨーロピアン・スタイルのグラスである。
赤い例のあれは結構甘く、ステビアかサッカリンのような味がしたことを覚えている。
旨いのか、と言われれば確かに旨い。
当時私はキャノンのFDレンズを常用していて、セルフタイマーにして一枚撮った。
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シングルモルトの夜だから。
■ 冷たい目でみないで。
と。
歌いながら通り過ぎていく。
■ 一般に、30代後半から40少しまでのあいだ。
もう若くはないさと自覚した頃合、男たちはくだらないものに凝りはじめる。
あるひとは教祖様だったり、自転車のフレームだったり、酒だったり鞄だったりする。
冒険小説とかハード・ボイルドと呼ばれる一群のハーレー・クィンの男版だったりすることもあった。
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鍛造ピストンの首振り。
■ いつだったかオイルを換えた。
ふらりと入った店にモチュールがなかったので、純正とされる化学合成の5-40wを選ぶ。作業する人に8リッター全部を入れないように頼んで、その後雨の中を戻った。
リッター3000からのオイルを選んでも、どうせ3000か4000kmで交換してしまうのだから、定番とされるものでその程を確認しておけばいいだろうという気もあった。価格は半分少しである。
■ 下が5なので、とりあえずは廻る。
ただ、廻り方に薄いひっかかりがあるような気もした。
綿のシャツで言えば、その番手である。
ガレージに降りてゆく。センサーを通り越してシャッターが開くまでの間、サンルーフを閉める。そして、運転席側の窓を開けるのだが、丈の短い鍛造ピストンが軽く音を立てているのが聞こえる。壁の反射だ。
この程度は別に問題ではないのだが、そういえばあれとあのオイルではこの音が出にくかったな、という気もする。
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スマトラの夜。
■ 数日ぶりにPCの前にいる。
メールと、デスクの上の郵便、未決の書類をよりわけて2時間が過ぎた。
金と黄色の箱があって、その上にゴシックでニコチンの注意書きがある。
適宜、歯を磨いてくださいな、ということになればスモカのコピーにもなろうか。
■ ZINOというシガリロは赤色が定番である。
とあるメーカーのセカンド・ラインだというが、真面目にシガーをぼんやりする暇のない時など案外いいもので、私は空気清浄機と窓の傍で適宜タシなむ。
ライターは、まとめ買いした確か仏製の100円のそれである。
石とガスを入れられるのがいい。あたりに散らばせておく。
■ 黄色のスマトラは、どこの葉なのか。
赤よりもやや軽いのだが雑味があって、唇と歯の辺りで潰したり転がしたりする。
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唐辛子。
■ 麻の敷物のうえに、赤い唐辛子を置いた。
色をみている。
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日暮れ竜胆。
■ 短い旅に出たり重なる〆切に追われたり、いつのまにか秋は深まる。
寿司と水を買ってかえって、また旅の支度である。
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