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2009年07月06日

「緑色の坂の道」vol.4400

 
     六月尽。
 
 
 
■ 坂道のところで、薄い月がみえた。
 雲のあいだにある。
 私はといえば、やっぱり仕事が億劫である。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4401

 
     港の女。
 
 
 
■ すえたような匂いが薄くして、何かと思えば、魚のそれと鉄鉱所からの煙が潮風に混ざっていた。
 口は悪いが、性格は古典的で、車なんて買わないで貯金しろと怒られたこともある。
 堅い肌をしていて、バス・タオルをほとんど使わなくても良かった。
 
 
「緑色の坂の道」vol 968
94/06/24
 

「緑色の坂の道」vol.4402

 
     六月尽 2.
 
 
 
■ スタッフが戻った後、もそもそと片づけをしていた。
 叱られたからである。
 湿り気があると音の変るアンプに灯を入れ、傍にあるものを入れると「黄色いさくらんぼ」である。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4403

 
     東京の女。
 
 
 
■ 青山通りを赤坂に上っている。
 ランダムにかけていると、ピーナッツである。
 年中生理前であるかのような、恋のバカンス系のものは時々くたびれるのだが、あら、あれは気持いいのよ、と加賀まり子さんが寸詰まりになったような妙齢が言った。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4404

 
     東京の女 2.
 
 
 
■ ま、それはそうですけどね。
 いわゆる、ホルモンのなせる業なのだろう。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4405

 
     東京の女 3.
 
 
 
■ 私はどうするかというと、少しだけ顔を出して後はフケル。
 戻る時、銀座の路地に入り、シュークリームをいくつか買う。
 
 

2009年07月07日

「緑色の坂の道」vol.4406

 
     水の月。
 
 
 
■ 七夕である。
 窓から外を眺めると、黒い森の上に丸い月がみえた。
 満月は昨日だったか、暦を確かめる気にはならず、黒ビールを持ってきて嘗め始める。 
 

「緑色の坂の道」vol.4407

 
     風が泣いている。
 
 
 
■ 街は浮かれているようにも、またその底におかしな諦めがあるようにも視えた。
 西の方から雨がきて、夜のとおりを渡っていく。
 
 

2009年07月08日

「緑色の坂の道」vol.4408

 
     ゴゴゴー、風が泣いている。
 
 
 
■ ゴゴゴ。
 など、低く歌った。
 浮島JCTを降りて、発電所がある辺りへいき、空を見上げると思ったよりも明るい月と雲である。
 この辺り、夜釣りをしている人たち相手にラーメンの屋台が出ていたものだ。
 今、その灯りはない。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4409

 
     風が叫んでる、ゴーゴーゴー。
 
 
 
■ 浜口庫之助さんの作詞作曲である。
 1967年、スパイダース。
 今聴くと、エレキの音が割れて録音されているのだが、そんなことはどうでもいい。
 ぶっきらぼうでロマンチックだった。
 
 
 
■ 私は、うんざりした打ち合わせの後だった。
 バブル期に中途入社した男がいて、伸びたり縮んだり。
 上からは長い眼でみてくれないかと頼まれているので端的にもできない。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4410

 
     早く忘れた方がいいぜ。
 
 
 
■ コンビナートの辺りを産業道路の方角へ向かう。
 脇道に入ると、今でも釣りができるスポットがあって、地元の男たちが休日の夕方などにぼんやりしている。
 少し前のマジェスタのトランクに、道具一式入れっぱなしなのだ。
 
 
 
■ モーテル奥の焼肉屋に入る。
 カルビとロースともやしのスープを頼んで、飯を貰った。
 オイキムチだけ別に包んでもらう。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4411

 
     夜更けのゴーゴー。
 
 
 
■ 若造だったスパイダースの面々が、ゴーゴーゴーと歌っているのは、考えてみると鬱陶しい。
 67年と言えば私は半ズボンである、
 シャボン玉ホリデーは日曜の夕方、スターダストのメロディと共に親父達の定番だったし、車で言えばべレットがまだ丸目2灯の頃だったろうか。
 
 
 
■ 梅雨の明けはじめるこの季節、南から風が吹く。
 月はぼんやりしていると角度を変え、そこにあった雲は海の上だ。
 
 

2009年07月09日

「緑色の坂の道」vol.4412

 
     ミンクのてざわり。
 
 
 
■ なんのせいか、私はケーリー・グラントが好きである。
 どちらかと言えば、第二次大戦後の作品。
 ヒッチコックの「泥棒成金」辺りから、グラントは別物に化けたような感じもある。
 
 
 
■ ドリス・ディと共演した「ミンクの手ざわり」は1962年。
 グラントは半分白髪だが、NY五番街の高層ビルからドリス・ディを追いかけ、腰にバスタオルを巻いたまま真剣な表情で出てくる場面は忘れがたい。
 ハリウッド特製二枚目半。と評したのは、我が国映画評論の大先達の方だが、言いえて妙な指摘だった。
 
 
 
■ 今も昔もそうなのだが、NYという街は貧富の差が圧倒的だった。
 ブロックひとつ隔てると、例えば肌の色が異なり、路上に置いてあるフォードかシボレーの凹み具合が違っている。
 イエロー・キャブ、その運転手の言葉が片言だった。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4413

 
     ミンクのてざわり 2.
 
 
 
■ 例えばこの映画は、「ティファニーで朝食を」の変奏曲である。
 裏表と言ってもいい。
 NYの高層ビルにオフィスのある独身男性グラント。
 最近流行りの言葉で言えばセレブということになるのか。
 どうも退屈な表現だが、さておき。
 映画のイントロで田舎から出てきたドリス・ディに、車で水をかけてしまう。
 そこから恋が始まっていきつもどりつ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4414

 
     ミンクのてざわり 3.
 
 
 
■ グラントの18番と言えば、クサッた時の表情である。
 んん。なんでこんなことしてんダロウ。
 でも真面目にやらなくちゃ。
 
 
 
■ この辺りの按配は、「北北西に進路を取れ」の中で、エバー・マリー・セイントの使っていた剃刀を使う場面にも顕れていた。
 小さな女ものの剃刀。
 それで駅か何かの公衆トイレで髭を剃るグラント。
 あんた、何やってんの。
 と、隣に立ったブルー・カラーの彼が眺める。
 
 

2009年07月10日

「緑色の坂の道」vol.4415

 
     水ホテル。
 
 
 
■ 何故だかわからないが、喉が痛くなった。
 これはくるかな、と思いながら漠然としている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4416

 
     待っていた小人。
 
 
 
■ もう一度言ってね。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4417

 
     北北西に進路を取れ。
 
 
 
■ 原題は「North by Northwest」
 1959年。ヒッチコック全盛期の作品である。
 冷戦真っ盛り、そういったスパイ映画の範疇とも言えた。
 
 
 
■ 見所はいくつもあるのだが、バスを待っているグラントのもたもたした按配が私は好きだった。
 手を握ったり離したり。
 それだけでじりじりとした時間の推移が分かったりする。
 グラントは大根だと言われたこともあったが、どうなんだろう。
 この場面をどうにかできるのは、少し老けたクーパーくらいしか思いつかない。スチュワートだと、線が細いだろうか。
 真面目で二枚目で、どこか抜けているという。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4418

 
     北北西に進路を取れ 2.
 
 
 
■ 相手役のセイントは、ブロンドの美人である。
 当時35歳。
 酸いも甘いも、不倫や愛人や結婚などをくぐり抜けてきたという設定である。
 一般に30代の独身妙齢というのは、背中のラインに気を配る。
 たいしたことはなくても、胸元の開いたものを買おうか躊躇する。
 後先を考えずそこへいくのは、こんなところに何時までもいられないと思っているからなのだ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4419

 
     ざらりとした緑坂。
 
 
 
■ 棄景、という言葉がある。
 いわゆるナレノハテなのだが、元を辿っていくと「棄民」という概念の演繹である。
 我が国の歴史をさかのぼると、満州であったり南米であったり、積極的に余剰人口を外に出そうという動きが確かにあった。
 王道楽土、または楽園と呼ばれ、何時か自作農にと夢を語ったものだが、その2世3世は時々戻ってきて、ある種コミュニティを形成する。
 
 

2009年07月13日

「緑色の坂の道」vol.4420

 
     白南風の頃。
 
 
 
■ 梅雨明けの頃、南から湿った風が吹く。
 私は微熱が残っている。
 
 

2009年07月14日

「緑色の坂の道」vol.4421

 
     白南風のころ。
 
 
 
■ 微熱なのであるが、アイロンのかかった綿パンを履いた。
 車はちょっとまずいので、よたよた坂道を昇り降りして医者へいく。
 顔で選んでいたこともあっただろうと思われる受付の方に、どうされましたぁ、と聞かれる。
 いつものことで。
 
 
 
■ 先生はメルセデスのGに乗っている。
 待合室には、Eのついた車雑誌がある。
 Nのついた雑誌でないところが賢明で、ホリデー・オートが置いてある開業医というのは少ない。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4422

 
     白南風のころ 2.
 
 
 
■ 診察は5分で済んだ。
 まだ若い先生はあたりがやわらかく、けれどもセンスはシビアで、おそらく奥様も美人である。
 私はといえば、会計をすませ、お大事にぃ、というリエゾンを後に外へ出た。
 これから薬剤師さんに会わねばならない。
 その前にイップク。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4423

 
     白南風のころ 3.
 
 
 
■ ゼロハリの携帯灰皿(限定)を持っていた。
 内部に精密なGPSが付いているそれである。#
 ところがライターを忘れ、ドウシタラヨカロ。
 向こうから、サンダルを履いて妊婦用のカーテンみたいな布を羽織った妙齢が咥え煙草で歩いてくる。
 
 
# ホンキにしないように。

「緑色の坂の道」vol.4424

 
     白南風のころ 4.
 
 
 
■ お嬢さんと呼びかけるか、オネーチャンとすべきかは客単価によって決まる。
 殿山さんが出てくる映画では大体後者である。
 本来であれば、火を借りるのは失礼なことなのだが、ええとそういう話をしているのではなかった。
 
 
 
■ 私は薬剤師さんのところへいっておとなしくしていた。
 先客もあり、粉の調合があるというので、すこしだけ歩き、階段を昇ったところのカフェで漠然とする。その間禁煙した。
 
 

2009年07月15日

「緑色の坂の道」vol.4425

     よせばいいのに。
 
 
 
■ 一杯目の酒を嘗めはじめた。
 ちょっと詰んだ仕事があって、前を忘れるのに苦労する。
 グリーンピースが上にのった、小麦粉だらけのカレーが食べたいとおもう。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4426

 
     河原で飯炊く。
 
 
 
■ どこか手頃な川の傍にいき、鍋で米を炊く。
 こうすれば便利だというような道具はあるのだが、そうもいかないので持っていくのは水だけである。
 地べたの虫を見ている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4427

 
     屋上にて。
 
 
 
■ 下にコンビニの入った高層ビル。
 いくつかエレベーターを抜けていくと、誰もいない屋上庭園がある。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4428

 
     屋上にて 2.
 
 
 
■ 誰が手入れしているのだろう。
 なんのためだろう。
 ここには東洋系ベビーシッターもあがってこない。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4429

 
     屋上にて 3.
 
 
 
■ 私は麦茶を飲んでいた。
 小さな蜉蝣が近くにきて、水は何処にあるのかといぶかしかった。
 
 

2009年07月16日

「緑色の坂の道」vol.4431

 
     鳥の夢。
 
 
 
■ 寝苦しい満月の夜、花が咲いては明け方までにしぼむ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4432

 
     戦中派不戦日記。
 
 
 
■ 資料を捜していたら、棚から落ちてきた。
 何時買ったものか、山田風太郎さんの若かりし頃の日記である。講談社文庫。
 表紙を裏返しにして、後輩というかなんというかから貰ったというかよく分からない鞄の中に突っ込んでいた。
 
 
 
■ 多分こうした本は、三崎の外れあたりまで電車に乗り、そのあいだ中捲っていればいいのだとおもう。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4433

 
     いまだすべてを信ぜず。
 
 
 
■「日本は亡国として存在す。われもまたほとんど虚脱せる魂を抱きたるまま年を送らんとす。いまだすべてを信ぜず」
(山田風太郎著:講談社文庫:1994年第5刷:528頁)
 
 
 
■ 緑坂には若い読者もいるので、その終末だけを引用してみた。
 若書きだとか饒舌だとか、そんなことは瑣末である。
 私はすこしうんざりしながら、時代の外側にひっかかっていた若い男の自我を考えていた。
 
 

2009年07月22日

「緑色の坂の道」vol.4434

 
     眠る男たち。
 
 
 
■ 植え込みのところで男が寝ていた。
 短パンを履き、サンダルを片方だけ脱いでいる。
 昔は色男だったのだろう、髪はまだ短く顎の線もすっきりしている。
 パックの日本酒がふたつみっつ転がっていた。
 外気は33度だという。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4435

 
     オアシス・オブ・ギンザ。
 
 
 
■ 銀座裏で所用を済ませ、デパートの紳士服売り場に入った。
 ここはかつて進駐軍に接収されていて、地下にはダンスホールがあったという。
 特殊慰安施設協会(RAA)である。
 内務省主導の、いわゆる性の防波堤ということだったのだが、中身については割愛する。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4436

 
     服屋のバー。
 
 
 
■ 黒か紺色のポロが欲しくて、漠然と眺めていた。
 定番のものというのは季節でも安くはならず、別に何時求めてもいいことになっているようだった。靴なども同じである。
 馬具の小物から発展した洋服屋でシャツを選ぶ。ライターで高名なそこである。
 映画「地下室のメロディ」で、偽貴族の師弟に扮したアラン・ドロンが、いかにもという風情でそれを見せびらかす場面があった。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4437

 
     服屋のバー 2.
 
 
 
■ 2Fは禁煙である。
 3Fだけにソファがあって、そこは吸ってもいいことになっている。
 昔、この銘柄のシガーやパイプがあったことを知る店員もいないのだろう。
 別にいいんだそんなこた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4438

 
     襟立男。
 
 
 
■ 結局、長袖を二枚買った。
 同じものである。
 いつだったか数千円で買った綿パンの上に羽織ってみたら、まあいいかなと思えたのだ。
 40過ぎた辺りから、着るものとか煙草とか、あるいは毎日食べるものにしても少しずつ嗜好が変る。どうでもいいといえばそうだし、やっぱりこれかなと思えばそれだけである。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4439

 
     金魚。
 
 
 
■ いつだったか首都高速を走っていた。
 霞ヶ関から外側に抜けるトンネルの辺りで、右に出ようとする。
 ウィンカーを2度出した。
 ちら、とミラーを見ると、AMGの白いセダンが猛然と加速してくる。
 コンプレッサーのついた定番の直線番長である。
 
 
 
■ そこで床まで踏めばいいのだが、あるいはシフトをひとつふたつ落とせばいいのだが、私は他人様を乗せていた。
 15度ハンドルを右に振り、そして戻し、戦意のないことを顕す。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4440

 
     金魚 2.
 
 
 
■ 勝つということもない。
 負けるということもない。
 これは珍しいのだと能書につられ、頼んでみたシングル・モルトや聞いたことのない銘柄の焼酎が本当に旨かった試しは少なく、実を言えばバブル期以来の記号の世界の延長なのだが、ある種分かりやすさというのは大事だとはおもう。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4441

 
     金魚 3.
 
 
 
■ シャツは襟が硬く、そのことが気になった。
 一回水を通せばいいかもですね、と妙齢本格派の店員が言う。
 喫煙具や車だのとは無縁のひとが言うのだから、そういうことにした。
 
 
 
■ 裏道を車まで歩く。
 ソムリエのエプロンをしたオールバックの30男が、カップ麺のお湯をこぼさないよう摺り足で歩いてくる。
 
 

2009年07月27日

「緑色の坂の道」vol.4442

 
     不良の夜昼。
 
 
 
■ 暑いのでぐったりしていた。
 こういう天候に外でうろうろするのは、健全な中年か初老にまかせることにして、体力を温存する。
 温存してどうなる、という気もしないでもない。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4443

 
     三人吉三、因果の理。
 
 
 
■ なんのせいか、時々古典と呼ばれるものを引っ張り出して捲っている。
 せんだっては河竹黙阿弥「三人吉三廓初買」
 なかなか骨の折れる本で、数頁捲っては溜息をついて元に戻す。
「浮世床」あたりだと、先達のコピーライターの方々がよくなぞらえていたもので、戯作そのものではあるのだが、黙阿弥のそれは奥にこくがありすぎる。
 
 
 
■ 双子の男女は忌み嫌われる。
 なぜなら終いに睦みあうからであると。
 そういった伝承が我が国には暫くあって、この作品もそれを下敷きにしたものではあった。
 確かどこかの国の王室関係のジャーナリストの方が、それに類することを本にされていた。
 それも困ったものなのである。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4444

 
     ピンクのポロ。
 
 
 
■ 今いる辺りには結構な車好きが潜んでいて。
 と、いう話は何度か書いた。
 大体都心部の奥まった辺りはそんなもので、なんでここにこんなものがあるのさ、と呆れることがままある。
 外苑西の辺りには一台のバモスホンダが棲んでいた。
 夕方、バタバタという排気音をさせて銀杏並木の下を流していく。
 
 
 
■ あまり手入れされていない、というか適当にヤレた感じのマトラもその角を曲がっていった。マトラとは仏製のスポーツカーである。仏車には過剰なレストアが似合わない。
 マトラを横から見ると、走る三角定規であった。
 オーナーとは立ち話をしたことがあって、真ん中のシート、荷物載せておくのに便利ですよと言われていた。
 マトラは3列シート。男3人だと夏場はいやかな。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4445

 
     ピンクのポロ 2.
 
 
 
■ 休暇の支度というかなんというか、車のシートを掃除した。
 革シートの場合、いろいろな方法はあるらしいのだが、私は通販だったかディスカウントで買った米国製の固形洗剤を使っている。
 絞ったタオルにそれをつけて、ただ拭くだけ。
 縫い目のところに埃がたまり、100円ショップで買ったナイロンブラシで掻き出すこともある。今回は面倒なので省いた。
 
 
 
■ 一般に革というのは高級だと言われているが、実はそういうこともなく、単に手入れが楽なだけだろうと思っている。
 元々車には屋根がなかった訳であるし、突然降ってきた雨に布シートであったとすればほぼパンツまで濡れる。半ば実用品なのである。
 
 
 
■ 2-TGとか18-RGの頃合、またはケンメリの頃、ビニールレザーのシートには通気用の穴が空いていることがあった。
 蒸れなくていいだろう、ということなのだが、その頃の車は夏場背中から足許までびっしりと汗をかき、先輩諸氏はサンバイザーに団扇を常備するのが普通だった。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4446

 
     ピンクのポロ 3.
 
 
 
■ ごしごしと擦っていると、びっしりと汗をかく。
 普段私は黒か紺のポロを被っているが、ピンクだったりすると何度洗ってもあまり変り映えがしない。
 薄くなるだけである。
 
 

2009年07月28日

「緑色の坂の道」vol.4447

 
     8月の12発。
 
 
 
■ 時折尋ねるビルの地下に、一台のXJ-Sが停まっていた。
 4リッターではなく12発のそれである。
 薄っすらと埃は被っているが見事に手入れされ、BBS風のメッシュのホイルも黒ずんではいない。当時、こうしたメッシュのホイルがヨーロッパでも流行った。特にドイツでは人気だったという。
 
 
 
■ この時代のジャガーの12気筒は、エンジンにパイピングが網の目のように走っていた。
 丁度排ガス規制の頃のトヨタの2リッターにも似ている。
 どこに手を入れていいのか、俄かに判断がつかない。

 
 
■ 何時だったかどこかのPAで、こいつがボンネットを開けていた。
 オーバーヒートしている訳ではなく、少し休ませ、熱を逃がしているのである。
 周囲の視線を気にせず、そうされていたオーナーはひとりで、暫く眺めていたら奥様らしき方が飲み物を買ってきていた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4448

 
     三角テール。
 
 
 
■ 維持のしやすさは別として、デザインからするとXJ-Sは初期型だろうとおもう。
 イタリアン・デザインなのだが、何故英国でそれなのかと言えば、多分この車が少しばかり非日常、またはイングランドの冬だったからではないかとおもう。
 分かりやすくてどこかあざとい。
 というのが、伝統的ジャガーの特質、簡単に言えばクラスなのだけれども。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4449

 
     NEGROS.
 
 
 
■ 新橋よりの銀座、資生堂までいかない辺りにシガー専門店があって、たまに駐車スペースが空いていると立ち寄る。
 中にいるのは三十路手前の妙齢。銀の眼鏡をかけている。
 もしかするとワザとかも知れない。
 後は、ピノキオの木靴と細身の縞柄のパンツを履いた若い男の店員で、髪の毛は染めない方がいいんじゃないかなと個人的には思っていた。どうでもいいことだが。
 
 
 
■ COHIBAの紙巻をいくつか買う。
 金と黒とオレンジ、または510ブルのサファリ・ブラウンに似た配色のパッケージである。
 結局は血膿色のシートを懐かしいと思う世界の野蛮さなのだろう。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4450

 
     コウ、手前たちは知つてゑるか。
 
 
 
■ このごろたいそう安い店ができたぜ。
 と、始まり、そいつは滅法界だが、と連なる。
 勢いがあるかないかは江戸のそれ。
 そのくせ、何時死んでもいいんじゃねえか、というようなところもあって、流行りのEcoより奥が広い。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4451

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2009年07月30日

「緑色の坂の道」vol.4452

 
     男の退屈、緑坂。
 
 
 
■ 暗闇坂の辺りで酒を買った。
 飲みたかったからである。
 この辺り暫くこないが、随分と雰囲気が変わり、また同じだった。
 夏でも毛糸の帽子を被った若い男がレジに並んでいる。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4453

 
     驟雨。
 
 
 
■ 雨は降ったりやんだりした。
 有給をとったのよ。
 メールに返信していない。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4454

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「緑色の坂の道」vol.4455

 
     夜更けの口説。
 
 
 
■ 今、デスクにライカのM6とR8のボディ、それからレンズ数本が置いてある。
 とりあえず麻のマットの上に置き、その横には文庫数冊とエタノールがある。
 何をしているかというと、途方に暮れているのだった。
 
 
 
■ 銀座というかなんというか。
 夏のなんとか会というDMが届いて、ちらりと捲るとぴかぴかである。
 ブラック・ダイアモンドの粉みたいなものを細工した指輪が40.
 これはいいなと思うデザインの時計が78.5.
 そういうものか。
 そういうものさ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4456

 
     夜更けの口説 2.
 
 
 
■ 高いといえば高い。
 けれども、Ecoという車の最も一般的なそれ、その革シート・バージョンに400近くを出すことを考えると物の価値というのは不思議である。
 自分はどこにいるのだろう。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4457

 
     夜更けの口説 3.
 
 
 
■ ライカのR8は、下手をするとF2より重い。
 道具として使い倒すという感じでもないので、頼まれ仕事の時には持っていかない。
 だがそのスクリーンを覗いていると、MFというのもいいものだなと思う。
 
 
 
■ 誰に対して作品を作っているかというと、どこかに口うるさい妙齢がいるのである。
 いいものはいい。駄目なものは横向き。
 そんな男や女が向こう側にいて、あなたなにやっているの、と笑う。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4458

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2009年07月31日

「緑色の坂の道」vol.4459

 
     あやめ。
 
 
 
■ トンネルを抜けると視界に赤いものが飛び込んでくる。
 焦げたような匂いがして、発炎筒がばら撒かれていると気づく。
 雨である。
 霧にも似て7月も終わろうとしている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4460

 
     夏越。
 
 
 
■ いつのものか、若い女性が歌うJAZZのアルバムらしきものを流していた。
 何処へ行ってもグローバー・ワシントンが流れていた時代があったが、その時できた子は今思春期を過ぎた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4461

 
     水沢に。
 
 
 
■ 私は仕事を終え、戻るところだった。
 事務所に電話を入れ、腹が減ったのでそれから殺伐としたハンバーグを食べた。
 人造の砂を噛んでいるような味がした。テーブルがべたべたしている。
 そんなこと。
 窓から外をみると、彼が身をかがめて仕事していた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4462

 
     ニーチェの著作権。
 
 
 
■ 細かい雨というのは一番滑る。
 首都高の繋ぎ目で、フロントが曖昧になった。
 試しにややきつくブレーキを踏んでみると、ABSが動作するしないかである。勿論直線でアクセルを踏めば、イエローのEPSが点滅する。
 私はギアを落とし、白い個人タクシーと速度を合わせた。
 彼らのペースが日常深夜のほぼ限界で、これは35のRやカレラの4でも同じことだろうと思う。
 
 
 
■ 間欠か定常かを迷うような雨の中、赤白い発炎筒が車線の真ん中に並んでいる。
 視界は曇り、点滅している光の中に黄色い作業車が案外に大きく、同じ色のヘルを被った男たちがコーンの内側にいた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4463

 
     バービヤール。
 
 
 
■ 発炎筒の近くに、ごろりと死体がある。
 兵士か子供か、それを撮る陣営の素直な男がいて、住宅街のスーパーの傍で個展を開くのだ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4464

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