水の底で 4.
■ 私は小型車に乗ってきていた。
なんのせいか、といえば流れである。
セカンドに落として峠を昇るのだが、時々横っ飛びして倒した後部シートの辺りがごとごと言う。
何時オイルを換えたか忘れたが、その時ディーラーにWAKO'Sが置いてあって、少ししか入らないからこれでいいだろうと選んだ覚えがある。その時はカメラバックを積んでいて、チーフだと思われる方が傍へ寄り、暫くその話になった。
■ 小型車で床まで踏むのは楽しい。
三人乗って坂道にさしかかり、エアコンが入っていると40まで下がる。
罵りながら窓を開け、コンプレッサーを切ったりして無駄なことをする。
それでいて平坦では170まで出たりするのだから充分以上で、強いて言えば下りのブレーキだろうか。
と、適合するパッドを捜したりすると何時もの脇道である。
2009年6月 Archive
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水の底で 3.
■ 誰かが亡くなるとかそうでもないとか。
そうしたことを書くのはどこか品がないような気がしている。
私は「花影」という大岡さんの作品が好きで、緑坂に何度も書いた。
この作品にはモデルがあるのだが、それを知ったり書いたりしても仕方ないだろうという気になっている。
表現には一定の節度のようなものがあって、これをやればこう流れると思いながらそうしない。
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水の底で 2.
■ 伊豆で風呂に入ったのはいつだったか。
深夜、ちゃぽんと浸かっていた。
姿は河童である。洗うのめんどくさい。
なんでこんなところにいるのか、一向に定かではないのだが、雨の頃合、この辺りをうろうろすることは多い。
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水の底で。
■ 向こう側に森のようなものがある。
窓を開けようと手を伸ばすと、小さな蜘蛛が昇ろうとしている。
私はぺたぺたと廊下を歩き、自動販売機でビールのようなものを買った。
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風景と男と 9.
■ たった独りで立っていた時。
あるいは座ってびくびくしながら煙草を吸っていた時。
男たちというのはどんな顔をしていたのだろう。
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風景と男と 8.
■ 勝新太郎さんと高倉さんが初めて共演した映画があった。
なんという題名の映画だったか、確か「宿無し」というタイトルで、健さんが東映を辞めフリーになったんばかりの作品だと記憶している。
ラストで二人ともあっけなく死んでしまうのだが、仁侠映画の英雄に飽き飽きしていた時期だったからかも知れない。
■ それはそれとして。
その映画の中でも、高倉さんはことある毎に「上等じゃねえか」の眼つきをする。
また出たよ。と、私はにやりとしながら眺めていた。
ベースがそれなのである。
別にいいじゃねえか。
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風景と男と 7.
■ いつだったか、高倉健さんが煙草を口にくわえているポスターが街に溢れた。
飯倉の交差点へ曲がる時、何時もそれが眼に入る。
高倉健さんはその時還暦を超えておられたとおもう。
私はいくつだったか、酒は何を飲んでいたか。
車は女は、と数えてみてもおぼつかない。
■ 上等じゃねえか。
と、火の点いてない煙草を唇の脇に、ポケットに手を突っ込んでつっ立っている。
着ているスーツは生地のいいもので、モノクロであるものだから光り方が目立つ。
簡単に言えばライティングその他、プロ中のプロの方々が参加されたCMだったのだろうと思う。
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風景と男と 6.
■ 例えば維持できず、相場が底値に近づきつつある500Eを、今現在そ知らぬ顔をして乗っているというのはダンディズムだろうか。
そんなことは気にならず、ただ好きなだけなのだが。
■ マーチの12SRに乗っている若い者も半分はそれに似ている。
都筑PAで走りこんだ彼がいて、ボンネットを開けてくれた。
そうこうしていると彼女が手洗いから戻ってきて、いい娘だよなと小声で言った。
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風景と男と 5.
■ 一気に格調が下がるのが緑坂である。
500Eに話を戻すと、この車は維持するだけで小型車一台が買えると言われている。
年50程度。
大体ロールスかベントレーの少し前と同じだ。
年間5000ばかり走ったとしてである。
■ 男の世界には無駄があって、酒や煙草や賭け事や、例えば新刊を買ったり買わなかったり。今時新刊一冊を買えば、とんかつ定食の並みか場所によっては上が喰える。
喰えるのになあ、と思いながら牛丼屋のカウンターで文庫を読んでいる男というのはそう悪いものじゃない。
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風景と男と 4.
■ 及ばなくていいのである。
十代かその辺りの頃、ヌカ六とかすったもんだを耳にした。
すげえなあ、と思ったものだが、さて相方はどうだったのかというと、とても聞けるような段階ではない。
あんないい女とロクかよ。
■ その後、あれこれあったとする。
あんないい女としみじみする機会があるとする。
あのね、瞬間風速なの。
は。
で、先輩はどうされているんですか。
知らないけどね、新宿から十番にいって今は房総らしいわよ。
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