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2008年12月07日

「緑色の坂の道」vol.4222

 
     ALL OF YOU.
 
 
 
■ 十二月になった。
 忙しく、ほとんど何もできなかった。
 黒いトレンチを着た男がタバコを吸いながら舗道を歩いてくる。
 大きく手を振って、前をはだけている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4223

 
     ALL OF YOU 2.
 
 
 
■ すこし歩くと公園だった。
 マフラーを巻いた中学生が座り込んで話している。
 砂場の近くに、赤いものがあって、子供が使ったスコップだと気づくに時間がかかる。 
 

「緑色の坂の道」vol.4224

 
     ALL OF YOU 3.
 
 
 
■ 前に使っていた駅には、古い地下道があった。
 漏水したそこを昇り降りするたび、何か別のことを思った。
 そこからが坂道で、車を停めてはワンメーターだけ乗ることもある。
 馬鹿げたことなのだなと今では思う。
 
 

2008年12月15日

「緑色の坂の道」vol.4225

 
     履かないが靴を買う。
 
 
 
■ 前に銀座にあった店がなくなって、残るのは元町とか青山あたりになった。
 案内をもらってついでに眺めにゆく。
 やっている時間を調べようとしたらバイト募集のサイトにあたり、そこに結構な成功談が書かれていた。写真もある。
 その日は雨だった。
 目の前に停めてハザードを点けている。
 近寄ってきた店員に見覚えがあって、そのサイトに載っていた彼である。
 
 
 
■ やあ、と言うべきかどうか。
 言うはずはないのだが、私は靴を一足買った。
 もうひとりの彼が、車を見張っている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4226

 
     履かないが靴を買う 2.
 
 
 
■ 昔、いわゆる男の世界の先輩筋に、靴はこうやって買えと教わったことがある。
 大体が靴下とセットで、あるいは背広などと同じである。
 素材なのかかたちなのか、山口瞳さんはそれをマテリアルと呼んでいた。
 ペラペラのものでも格好がいいことがあって、着る人間の気分のようだ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4227

 
     履かないが靴を買う 3.
 
 
 
■ まだ卸していない靴が数足あって、どうしたものかなと思っている。
 海外で買ったものもあればそうでないものあり、その経費は一体どういうことだったのだろう。
 最近はそうでもないが、かつて私は飯なんてものなあ腹が膨らめばいいんだよ、というところがあった。
 居酒屋では烏賊ゲソの唐揚が好きである。
 または蛸である。
 落花生の産地辺りから仕事にきている妙齢前半が勢いよく唐揚を持ってくると、どうもありがとうと思わず頭を下げたものだ。
 時々コンビニに入ると、彼女が20年過ぎた辺りだろう、粋な本格派が眉を剃りちょっと笑ったりするのでなんともいえない。
 
 

2008年12月17日

「緑色の坂の道」vol.4228

 
     ROMEO Y JULIETA.
 
 
 
■ 今、机の上に試験管をアルミにしたようなものがある。
 タミヤのカラーで塗り分けたようなそれだが、キューバ産の葉巻のケースであった。
 何故それがあるのか、と言えば、忙しいからである。
 
 
 
■ 近頃齢のせいで、明け方近くまで飲んでいるとほぼ三日酔いくらいになる。
 使いものにならない。
 周囲からシッシッと追い払われるような按配で、ほぼうつむいて過ごす。
 隅っこにゴミ落ちてるなあ。
 その時に考えることと言えば、過去の人生のフラッシュバックであったり、これから先のよしなしごとだったりする。
 こんなことしていていいのダロウカ。
 よかないです。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4229

 
     ROMEO Y JULIETA_2.
 
 
■ あなたも残り少ない人生なのだから、みんなに幸せをね。
 天使にそう囁かれると、クリスマスなのである。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4230

 
     ROMEO Y JULIETA_3.
 
 
 
■ あれはいつのことだったか。
 男たちに会いにいった。
 
 
 
■ カウンターの中にいるチョッキを着た彼らである。
 いつもの彼は姿がみえず、多分剃った眉毛で娘を風呂に入れているのだろう。
 年頃になったらどうするんだよ。
 それですよ。
 酒付き合ってください。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4231

 
     ROMEO Y JULIETA_4.
 
 
 
■ 背の高い彼はいなかったが、もうじき30になるというもうひとりの彼がよく喋った。
 酒場の内側と外というのは結構な隔たりがあるもので、決して同じ土俵になるものではないのだが、ほぼ初対面の私に、これからどうしようかと思うんですよ、とかいう。
 まあなあ。そういわれてもなあ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4232

 
     ROMEO Y JULIETA_5.
 
 
 
■ 酒を嘗めにきて、人生相談をされるというのはありがちである。
 こちらは酔っているので、責任のないことしか言えない。
 狐とアライグマ系と、どちらがいいんですかね。
 馬も熊も、手長サル系も最近はある。
 一般に言えるのは、疲れていると肉ジャガにやられる。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4233

 
     ROMEO Y JULIETA_6.
 
 
 
■ やられたんスか。
 やられたんだよ。
 でもね、それはひとつのセオリーでね。
 勝負下着みたいなもんスね。
 ほぼ似たような概念でアル。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4234

 
     ROMEO Y JULIETA_7.
 
 
 
■ 何故私はこのようなことを話していなければならないのか。
 彼の顔を立てようと、ぺルノーの後に定番のものを貰った。
 ジンは何にしますか。
 おまかせします。
 
 
 
■ 見えないように彼は手早く作る。
 オリーブをちょっと齧って塩辛い。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4235

 
     ROMEO Y JULIETA_8.
 
 
 
■ クロークの妙齢にコートを出してもらった。
 自分で着ますと肩にかけてもらうのを省いた。
 通路までのあいだ、私はアルミの試験管のようなものを口に咥えて上げ下げしていた。
 シガーの残ったものを入れてもらったそれである。
 出口の辺りで小さな笑い声が聴こえる。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4236

 
     街路樹。
 
 
 
■ 坂の途中に小さな骨董品の店がある。
 時々ガラス越しに覗くのだが、青磁の香炉が置いてあった。
 沈む肌のような色合いである。
 
 

「緑色の坂の道」vol.4237

 
     街路樹 2.
 
 
 
■ 暗闇のなかで、例えば煙草の灯りに浮かんだ青磁の色はくすんでいる。