2008年6月 Archive

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     六月さいごの雨。
 
 
 
■ 視界の隅に、紫の色がある。
 濡れているとその色は濃い。
 冷房が入っていて、その下が流れない。

 
     いてもたっても。
 
 
 
■ ということはほとんど無くなった。
 この齢でそうであったらまた別の話で、建前は水のようである。
 夜の巷をうろつく、ということも最近は少ない。
 ちょっとそういうのはいいかな、という按配だろうか。
 
 
 
■ ただ、時々乾くような時があって、車で少し遠出する。
 夜の小雨の海を眺めて、何が楽しいんだろうとも思うが、別に楽しいからしている訳でもないので、なんのせいか。

 
     聴いてゴクラク、見てジゴク。
 
 
 
■ 先の緑坂で「ここ」とは当時のYOMINETのことである。
 詳しくは書かないが、なかなか修行になる場でありました。
 当時のお姉さま方、いかがお過ごしでしょうカ。
 いずこにありや去年の腹。
「街角の煙草屋までの旅」というのは、新刊で求めその後文庫でも何冊か入手した筈なのだが、書棚から出てこない。
 だもので、正確な引用ページなどは省かせていただく。ご寛恕の程。
 
 
 
■ それにしても「泣くことないじゃないのヨー」の下りは的確である。
 気がいいホステスであることは自ずから分る。
 聴いて極楽、見て地獄だったら、ドウシタラヨカロウ。
 と気が付くのはすこし経ってからで、その時はいてもたってもいられないのである。

 
     赤線オペラ。
 
 
 
■ 客と娼婦のやりとりをオペラにしようという話があったのだそうだ。
 阪田寛夫氏と服部良一氏が発起人だそうである。
 この名前を眺めていると、さもありなん、とうなづく方もいるやと思える。
 
 
 
■ まあ、ここからが本題。
 これらの素案を酒場で話していると、ホステスが味のあるやり取りを挟んでゆく。
「高かないワヨー、聴いてゴクラク、見てジゴクというじゃないのヨーオ」
「だって七百五十円しかないんだヨーオオ」
「泣くことないじゃないのヨー」
 金のない男が夜の巷をうろうろしているのである。
 
 
 
■ つまり、切迫してくると人間の元々の部分が顕れてくる。
 吉行さんは別の処でこのようにも書いている。
「おまえバカだなあ、あそこは冷たくされに行くところじゃないか」
「女にあたたかくされるに越したことはないのだが、冷たくされる場合もしばしばあって、大袈裟にいえばそれをうまく受けとめることによって人間としてのフトコロが深くなるのだ、という意である」
 そこまで書くと一般教養のような気配も浮かぶが、大筋ではそのように言って差し支えなかろう。
 ここはセンスの良い女性が多いので、このオペラはまた違った展開をみせるだろうと思う。
 
 
○「緑色の坂の道」vol.1573
95年3月

 
     赤線地帯のシマオ。
 
 
 
■ 吉行さんの本をやおら読み返している。
「街角の煙草屋までの旅」という雑文集があって、これは何時買ったものか。相当若い時であるが、そのころ理解していたのか疑わしい。
 
 
 
■ 疑わしいが、線が引いてある。
 鉛筆で細く、というところがなんだか感じがある。
 自分で自分に感心していても仕方ないので次に進むが、島尾敏夫氏と赤線にいった時の話があった。
 
 
 
■「ちょっとそこのおめがねさーん、寄ってらっしゃいナアア」
「一まわりして、またくるヨーウ」
「あんたさっきからぐるぐるまわってるじゃないのサアー、いいかげんにしたらどうなのヨーオオ」
「それを見てたのカーア、それじゃここらで成仏するかナーアア、時間でいくらダーイ」
「千円だわヨーウ」
「高いゾオオ、負からぬカーアア」
 
 
■ 面白いので続く。
 
 
○「緑色の坂の道」vol.1572
95年3月

 
     赤い橋。
 
 
 
■ ヌバックの靴をおろした。
 雨になるかも知れない。
 鉄塔の向こうに赤い橋桁がみえて、何処に続くのか気になった。
 
 
○「緑色の坂の道」vol.1204
初出:94年9月

 
     北へ帰る豚の群れは誰も無口で ブウ 6.
 
 
 
■ だとしたら、そこからどうやって戻ったのか。
 最終的に戻ったからここにいる訳だが、途中でチンボツしたかのような気もする。
 
 
 
■ 全然話は飛ぶが、いわゆる連れ込みと呼ばれるところで一夜を過ごし、昼近い雨模様の頃に起きると、ベットの下にもさもさしたものがある。
 いわゆるこれが歴史である。このホテルも古いのだろう。
 これをワビサビと捉えるか、まあ著しく不潔、と激しく捉えるかで男の人生は随分変わるものだと言われている。
 おばさん、お湯出ないよ。
 そうかい、今炊くから。
 いたしかたなく、また履いて待っているのである。

 
     北へ帰る豚の群れは誰も無口で たぶん 5.
 
 
 
■ 緑坂は1から今は4000程になったのだが、中には同じものが含まれている。
「青い瓶の話」というシリーズもあって、これも確か数千。
 クローズドのMMや色んなところで書いてきたものだから、その全てを現在ネットで読むことはできないでいる。
 
 
 
■ これは初出は何時だったろう。
 凍えそうな仔豚みつめ泣いていました
 と、誰かが何処かで歌っていたような気もするのだがよく覚えていない。
 荒川区のスナックだったろうか。
 モーロク。

 
     知りたくない気分。
 
 
 
■ 〆切がひとつ終わって数日経ち、資料を片付け始めた。
 大体紙袋ひとつふたつがゴミになる。
 ついでに棚の辺りをあさって、いつか使うだろうと思っていた書きかけやラフなどを詰めると、東京都推薦のゴミ袋がほぼ一杯になってゆく。
 スタッフが戻る時に捨ててもらい、暫く漠然としていた。
 
 
 
■ 二三日前からどうもフラフラするので、ああ二日酔いなんだなと思っていたら風邪である。平熱がいくつあるのか意識したことがないので、定かではないのだが、7度5分を超えると比較的億劫なものだった。
 そういう時に限って、急ぎのメールや電話があったりするものだから、同じ事を何度か繰り返して書いたりする。
 あ、こりゃ「仲良きことは美しき哉」の先生と似てきたかな。
 と、思いながら、アポロチョコレートを摘まんでいる。

 
     MEDEA.
 
 
 
■ もともとは神々の血を引いて、魔術を使う妖女であるという。
 そうした性格は背後に隠されていて、表現される際には奥行きのある遠くから聴こえる声が必要となっている。
 時折、巫女のような女のひとに会うことがあって、残るものが似ているので驚く。
 それは何かというと、端的だが夢の中で意味を教えるのである。
 
 
○「緑色の坂の道」vol.1203
初出:94年9月

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