2008年2月 Archive

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     なにを言問う。
 
 
 
■ 言問通り。
 東京には「言問橋」という名の橋がある。
 まだ歩いて渡ったことがない。
 今頃渡れば、多分風邪がぶり返していくのは確実だが、要は土地勘、馴染みがないからなのだろう。
 
 
 
■ 上村一夫さんという漫画家がおられた。
 同棲時代とか、修羅雪姫などで名がしられている。
 小品に見るべきものがあって、神楽坂あたりに棲息する「帯師」の話であるとか、巣鴨ガスタンク裏のゲイ・バーのマスターが主人公の探偵物なども繰り返し読んだ。
 
 
 
■ 読んだからどうだという訳でもないのだが。
 では言問の辺りから上りに至って、路線に並ぶ赤提灯で飲もうかとか、近場のドヤに暫く泊まってみようかと考えたことはない。
 それをしてはいかんのではないかという気がする。
 自分は通り過ぎる立場なのだから、生活はここにないのだから、舞台裏を覗いてそれがどうなるのかと思うのである。

 
     わかい木 1932-3.
 
 
 
■ 私は若造だった。
 分ったような顔をして、何も分っちゃいなかった。
「あら、今は違うの」
 という声があちこちから聞こえるが、何もリエゾンでなくてもいいとはおもう。
 
 
 
■ おいら八ツ山から先なんて年に数回しか行かない。
 八ツ山とは、旧江戸と東海道を分ける品川にかかる陸橋である。
 かつてはその下を水が流れていた。
 少し高台になっていて、ゆっくりと曲がってゆく海老茶色の電車の踏切がある。
 教会がありホテルがあり、それから御殿山のお屋敷町とその坂下がある。
 
 
 
■ 東京でいうところの下町。
 例えば滝田ゆうさんの描く界隈と、少し先の銀座界隈とでは、ひとの流れも物の流通も、もしかしたら違っていたのかも知れない。
「幕末太陽伝」という日活の名作があるが、いい気なお坊ちゃまとそうではない階層とのドタバタを、裕次郎とフランキー堺さんが演じていた。舞台は品川宿である。
 フランキーさんはモダンボーイそのもので、ジャンルは違うにせよ三木トリローさんの流れを確かに汲むスタンスと演技である。
 これは何処で撮ったんだろうな、と捜しにゆくのだが、今はクリークの脇に薄いマンションが建っていた。

 
     わかい木 1932-2.
 
 
 
■ 親父さんは、娘さんの話をしていった。
 カカアがピアノとか言い出しましてね。
 はあ。
 それでおいらは月賦で買ったわけだ。
 
 
 
■ 当時、娘さんがちょっと気に入らない相手と所帯を持ち、もうじき孫が産まれるかというようなところだったらしい。
 職人の風上にもおけない野郎でね。
 センセイ方の世界にもあるでしょう。

 
     わかい木 1932.
 
 
 
■ 仕事場のデスクの上はガラスがひいてある。
 一度、エスプレッソを入れる器具、その湧いたばかりのものを直接置いて、見事に割れた。
 あのときは金がなく、相当泣いた覚えがある。
 確か大井町辺りのガラス屋の親父さんが訪ねてきて、その場で面取りをしていった。
 それでなんですかい、先生は何をされているセンセイなんですかい。
 
 
 
■ おいらには難しくてさっぱりわかんねえや。
 とか言いながら、一服を何度かくりかえし、茶をおかわりして軽トラックで戻っていった。
 勉強してくれたかと言えば、全くそういうことはなかった。

 
     イマジネィション。
 
 
 
■ シナトラとトミー・ドーシーのアルバムを聴きながら、壊れかけたソファの上でこれを書いている。
 緑坂用のUSBメモリがあって、一度尻ポケットで割った。
 掲載は私がすることもあり、スタッフに頼むこともある。
 サーバーがいくつかあるので一回は掲げるのだが、部分的に会員誌みたいなことをして遊んでいたこともあった。
 
 
 
■ ソファの上に座布団を持ってきて、それに胡坐をかく。
 それなら絨毯なり床に座ればいいとも思うのだが、そんなことよくわからない。

 
     黒い庭は眠っている。
 
 
 
■ ポーランドの詩人に、と書き始めるといかにもそれらしい。
 が、このところ詩集などはあまり捲っていない。
 若い頃に買った新潮文庫などが僅かに残っているだろうか。
 あれは擦り切れるまで読んだ。
 覚えているか、と聞かれると、そういうところもあり、そうでないところもある。

 
     半月。
 
 
 
■ 高いところに月があって、廻りに雲がない。
 黒い庭は眠っている。

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