2004年11月30日

「緑色の坂の道」vol.2836

 
        十二月にできた友達。
 
 
 
 
■ という短編小説がある。
「事件屋稼業」の関川夏央さんの手によるものだ。
 小説の出来それ自体は、巣鴨ガスタンク下へ引っ越した元国体選手で今営業マンという按配のそれであるが、この題名は適度に女々しくて気に入っている。
 どうせハードボイルドごっこなんて、女々しいもんである。
 
 
 
■ 午後から薄く頭が痛く、今薬をかじった。
 とあるメーカーから、カラーレーザー・プリンターを借りていて、その出力に追われていた。1200dpiである。ICMも効いているような気配だ。
 葉書大までならば、数年前のインクジェットで出していたものと、そう変わりのない色具合である。
 速度は圧倒的に速い。
 これで約100万というから安いのか高いのか。
 場合によっては安いこともある、という気もしている。
 
 
 
■ なるべく感傷的にならないように書き始めたのだが、これから新宿のホテルに出かける。
 世話になった担当者が突然の異動で、その送別の会の後、軽く一杯を誘ったのである。
 仕事半ばで部署を替わることの無念さ。
 そんなものがメールの文面から滲んでいて、半日、仕方の無い気分だった。
 私は組織の列の外にいるが、内側にいるひとたちもまた、同じ酒を嘗めてはいる。
 
 

2004年11月24日

「緑色の坂の道」vol.2835

 
       つまんない男。
 
 
 
 
■ ね。
 と、言われたことがある。
 指折り数えて百八回。
 日吉坂を顎を突き出して下ってゆく女を眺めていて思い出した。
 女に金は使うものではないさ。
 本当のことをいうものでもない。
 
 
 

「緑色の坂の道」vol.2834

 
       みんな歌いながら通り過ぎる。
 
 
 
 
■ 師走の気配だ。
 背中を丸め、コート姿の男が横切っている。
 年ごとに時間が溜め込まれ、昨日何をしていたのか思い出せないでいる。
 
 

2004年11月17日

「緑色の坂の道」vol.2833

 
       プレス。
 
 
 
 
■ 明け方近い、首都高速横羽線を飛ばしてゆく空のトラック。
 これを抜こうと思ったら、相当の気合いが必要だった。
 新聞を積みにゆくのである。
 
 
 
■ というものではなく、コニカミノルタのサイトでプレスリリースが発表されている。
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「パーソナルアドカード」
 数年前より街中で無料配布されている広告目的のはがきサイズのカードがありますが、このカードはそのデザイン性の高さや個性、限定性によりコレクターが出現するほど人気を博しています。
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北澤事務所
北澤浩一(1958年生、写真家/デザイナー/コピーライター)が運営を行う。
作品集「列島いにしえ探訪」「甘く苦い島」(初稿:読売新聞社)。
写真とデザイン、日本語を組み合わせた作品群は高い評価を受けている。
www.kitazawa-office.com/
 
 どちらのサービスも、今までの写真入りカードでは飽き足りない方、人よりもお洒落なカード作りをしたい方を中心に、自分の個性を大事にするユーザーの方に多くご利用いただけるものと考えております。
(該当部引用)
 
 

「緑色の坂の道」vol.2832

 
       狐罠。
 
 
 
 
■ 冬になると狐が山からおりてくる。
 山は飢えるからだ。
 
 
■ 私達は上野の歩道橋の下に車をとめた。
 黒の足立ナンバーが出ていった後だったからだ。
 雑居ビルの広場で、高校生達が何事かを待っている。
 赤い髪をして、数人づつ舗道に座り込んでいる。
 一本路地に入ると、ハングルやイスラム語で書かれた看板の店がある。
 数人がたむろして、鋭い目付きでこちらを監視している。
 道の外れの信号で待っていると、腰までストッキングの若い女ふたりと並んだ。眼があう。
「寒いね」
 と言うと、
「ニッポン、サムイ」
 と彼女は言う。
 
 
○昔坂 93_12_28
 
 
 

「緑色の坂の道」vol.2831

 
        夜は冷える。
 
 
 
 
■ 北の知人から電話があって、明日は雪になるという。
 気がつけば冬なのだ。
 去年のクリスマス、何をしていたか思い出せる男は少ない。
 
 
 

2004年11月16日

「緑色の坂の道」vol.2830

 
        木枯黒ビール。
 
 
 
 
■ 雲が急いで流れていた。
 信号待ちのあいだでも。
 私の車は汚れていて、前の席のマットには枯葉が何枚も転がっている。
 山越えをしてきたままだからだが、暫く洗わなくてもいいだろうとそのままにした。
 あるホテルの入り口に停めると、心なしか冷たい態度で接してくる。
 ベントレーの隣だったからかも知れない。
 
 
 
■ 仕事場を暖め、黒いビールを飲んでいる。
 喉の腫れに少ししみる。
 都会はコートを着たひとの姿が目立った。
 
 

「緑色の坂の道」vol.2829

 
        次ゆこう。
 
 
 
■ 段階が違うということは、構造が違うということだ。
 
 
 
■ 発達論の成果を踏まえた一論の中に、キメの台詞があった。
 私はシビれて、なんとか使えないかと無い頭を絞った。
 今までのやり方では、どうも旨くゆかない時というのがあって、暫くじたばたするのだけれども、とりあえず何かを壊さなければならない。
 壊すことはつまり〈破壊〉で、間違えるとこちら側に戻ってはこれなくなる。
 かといって、手加減を意識すると旨くはゆかない。
 
 
○昔坂 93_11_22
 
 

「緑色の坂の道」vol.2828

 
       蔓。
 
 
 
 
■ 赤い実、まだ青い実。
 暮れてゆく空と、自分のすいた腹。
 
 
 

2004年11月15日

「緑色の坂の道」vol.2827

 
       木枯 2.
 
 
 
 
■ 木枯に帰るところがない、と唄ったのは誰だったろうか。
 私は濁ったスープをつくった。
 
 
 

「緑色の坂の道」vol.2826

 
       木枯。
 
 
 
 
■ 夜半、ばらばらっと音がした。
 トタン屋根に、何かが落ちるような音である。
 雨かと思い、暖房の温度を上げる。
 それから風になって、銀杏の樹がぼうと泣く。
 
 
 

「緑色の坂の道」vol.2825

 
       モノクロ西行。
 
 
 
 
■ 暫く前、「たまごっち」によく似た万歩計が売られていた。
 世話をしないと、安い基盤の中に棲む犬がすねてゆく。
「タビにでます。捜さないでください」
 といって、後ろ姿をみせる。
「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」
 
 
 
■ 透明なプラスチックが曇り始めた頃、そのメッセージは出てくる。
 当時はまだモノクロで、モノクロの犬が遠ざかってゆくのであるが、犬も歩けば出家する。
 
 
 

「緑色の坂の道」vol.2824

 
       リル。
 
 
 
 
■ 新宿の裏通りで、インイン滅滅と酒を飲んでいた一時期があった。
 ほんの僅かな間で、何故かというと怖かったからだが、夜の路地から向こうを眺めると工事中の都庁の影が赤く点滅していた。
「もっと景気のいい歌、うたいなさいよ」
 と、リー・マービンが化粧したようなおねえさんに言われた。
 声まで似ているんだ。
 
 
 
○昔坂 94_06_28
 
 

2004年11月06日

「緑色の坂の道」vol.2823

 
       甘く苦い島。
 
 
 
 
 ここを開く。
 ま、そこは流れで。
 
 
 

2004年11月04日

「緑色の坂の道」vol.3463

Photo Design / kitazawa-office
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■パーソナルアドカード 「甘く苦い島 - Insula Dulcamara 」
Distributed by コニカミノルタ

2004年11月01日

「緑色の坂の道」vol.2822

 
       夜に読む坂 2.
 
 
 
 
■ そのホテルのバーは、薄い葉巻の匂いがする。
 まだ二十歳になったばかりだろうという、灰色の上着を着た若者が、煙草なり葉巻なりの選択を手伝う。
 これは一本2000円だね、というと、よくご存知でと、少し脂の浮いた顔でこちらを見る。
 私はここは江田島かと思った。
 
 
 
■ 悪いが、このマッチをふたつくれよ。
 ということで、今私の仕事場の桜の机の上には、割り箸ほどの長さのある、葉巻会社のマッチが置いてある。
 使う気にはならない。
 彼の当番が何時なのか、よう、元気かい、と言いたいところではあるのだが、月末の財布は領収書だけで厚みを保ってもいた。
 
 
 

「緑色の坂の道」vol.2821

 
       夜に読む坂。
 
 
 
 
■ 緑坂は、毎日ほぼ三桁の人たちが覗きにくる。
 酔狂だな、と思うところもあるが、特に真夜中にくる方々。
 週末だと、それは二十人を下らない。
 こう書くと失礼なのだが、私は薄い苦笑いを押さえきれない部分がある。
 おそらくは軽く飲まれているだろう。
 一杯目の酒と三杯のそれとでは、やや味が異なる。
 つまりそれは、読み方にも通じる。
 
 
 
■ せんだって私は、虎の門にあるホテルのバーにスッコチのボトルを入れた。
 シニア・バーテンダーの三十代半ばの彼は「スカッチですね」と「カ」の部分にアクセントを入れる。
 彼は高校を出て、その道の学校に入った。
 背は私よりも少し低いのだが、髪を後ろに撫でつけ、十一時十分の位置に爪先を揃えて立つ。
 
 
 

「緑色の坂の道」vol.2820

 
       日曜日の霧。
 
 
 
 
■ 六時間ほど、独りで走った。
 雨が降り、そしてあがり、古いカセットを何度か聴いた。
 背中を丸めながら指のリング抜き取ったひとが20年前にいたが、それはそれ。
 今は長男が大学生になっている。
 
 
 
■ 十代の終わりにみた風景というのは、おそらく刷り込まれている。
 初めての煙草や、安い酒。
 初めての柔らかい沼のような。
 自分を取り込んで駄目にしていったものなど。
 
 
 

「緑色の坂の道」vol.2819

 
       うかうか三十。
 
 
 
 
■ じたばた四十。
 思い出してる十七の夏。