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青瓶 2491

        不良の系譜。

        近藤等則
        Spiritual Nature - Over the Rainbomb -




■ 近藤等則さんのCDジャケットの、アートディレクションをしていた。「近藤等則 Spiritual Nature 第一弾 - Over the Rainbomb -」
 国内販売は、ビクターミュージカルトレーディング。
 ジャケットの題字は黒田征太郎さんである。

 若い読者には説明が必要かもしれない。
 近藤さんは、Jazzトランペッター・プロデューサとして世界的に有名な方である。とりわけ、アメリカ・ヨーロッパでの評価が極めて高い。
 近年は、2000年「Mt. Fuji Aid 2000」、2001年「ダライ・ラマ14世提唱 世界聖なる音楽祭・広島2001」をプロデュース。
 NHKの「地球を吹く」シリーズでは、ネゲブ砂漠、アンデス山脈などの大自然と対峙して入魂の演奏を行なってきていた。映画、CMなどへの出演も多い。
 最近では、ビクターエンターテイメントからの「THE 吉原」が好評。
 栄芝師匠×近藤等則のコンビは、秋から冬にむけて各地を廻る。




■ 近藤さんとお会いしたのは、松岡正剛さん主催のパーティである。
 私はかつて「編集学校」の三期・不良のセンセだったもので、珍しく定価で買ったブーツなどを履いて会場の隅にいた。
 近藤さんは栄芝師匠、鈴木清順監督などと並び、壇上で挨拶をされていた。
 大混雑の一次会が終り、二次会で酒が入る。二言三言、近藤さんと話をして、「THE 吉原」のサンプル版をいただいた。

 夏のはじめ。
 空気がくぐもって湿る夜、私は信濃町で行なわれた会合を終え、一人で青山墓地界隈を歩いていた。普段は車で移動するのが常だが、酔うと歩く。
 いつのまにか六本木ヒルズの手前につく。
 手前に隠れたラブホテルがあり、その価格などを眺め、坂道を昇ると窓が開かれたBarがあった。カウンターに見覚えのある顔が並んでいる。
 私は一度通り過ぎ、それから引き返してBarの中に入った。
 定番のウィスキをストレートで貰い、飲み干して会計を済ます。
 帰り際、見知った顔に声をかける。いつぞやのサンプル版のお礼である。
 そこからは、こっちきて飲めの世界であり、いつの間にかJazz談議に華が咲くことになった。

「サッチモが死んでJazzの太陽が落ちた。マイルスが死んで、Jazzの月も隠れてしまった」オレは朝日の取材にそう答えたんだ。それから、電話口で暫く泣いていたよ。涙がとまらねえんだ。
 近藤さんはそんなことを言う。78年にNYに渡った時に、マイルスに呼ばれたことがあるという。でも、オレはいかなかった。いったらオレはトランペッターじゃなくなるじゃないか。

 前後の脈絡と詳しい事情は聞いたが忘れた。確かそんな話をした覚えがある。
 ブルーノートの何番台。そのジャケットの話。
 私はジンのストレートを二杯三杯。いつの間にか腕まくりをしている。
 
なんだかよくわからないが、旨い酒だったとおもう。
 不良の大先輩とともに酒を飲む。
 男として、これがどういうことかはわかるだろう。





■ 八月の終わり、事務所の壊れかけたソファで漠然としていると電話が鳴る。
 墓地はいりませんか、というものかと思って出ると「近藤等則です」と名乗った。実はね、と話はここからである。
 数日後、送られてきた音のデモ版を聴く。
 部屋で聴き、仕事場で聴き、それから車の中で聴いた。音の厚味というものがもしあるのだとして、それから終焉に向かう苛立ちと不安があるとして、この音楽は日本という枠組みを超えている。その速度、広がり。
 逆説的に言えば、だからこそ「THE 吉原」のような音を見つけ、構築することができるのだろう。
 
お世辞ではなく、ビッグ・アーティストの音だと私は思った。
 それから他の仕事を一切止め、数日の徹夜を含むデザイン・ワークスと、関係各位・各社への調整作業が始まったのである。

●Spiritual Nature / 近藤等則 Free Electoro - Over the Rainbomb -
A4Webフライヤー/ジャケット/レーベル/SPNロゴ
題字:
黒田征太郎
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